あなたの家族が傷つけられたら、加害者を許せますか?―帰る家がない少年院の少年たち感想まとめ―

「少年たちはなぜ犯罪を繰り返すのか?」という主題のもとに描かれた作品

今回は、中村すえこ著「帰る家がない少年院の少年たち」について紹介します。

概要

実際に少年院に収監されていた少年たちがなぜ犯罪に至ったのか背景に迫る。

そこでは、虐待され続ける家から逃れる少年、友人を救うために自分を犠牲にする少年…など様々な背景があった。

元レディースの総長だった著者だからこそ引き出すことができた少年たちのありのままの思いが綴られる。

感想

あなたは少年たちの犯罪についてどう思いますか?

絶対に許せない、私には関係ない、もしかしたら自分の家族も加害者になるかもしれない…など様々な思いがあると思います。

私は少年たちの犯罪に対して、もし自分の家族、友人、大切な人が被害者になると考えると到底許せないと思います。

ただ本書を読んで、ある少年のエピソードから少年・少女たちの再犯について考えるきっかけになりました。

「捕まってホッとしている」

「怖かったの?」

私がそう聞くと、ワタルは、

「もう悪いことしないですむ・・・・・・」

引用;第4章 追い詰められて闇バイトで再び犯罪へ p156

彼は闇バイトによって逮捕に至った場面でそう言いました。

一度逮捕され、更生すると誓ったものの先輩からの恐喝により、たった数日間で、闇バイトに手を出し逮捕されました。

彼には懲役11年の実刑判決が下され、実名で報道されることも決定しました。

彼はもう一度社会に復帰することができるのでしょうか?

再犯を犯すことなく生活を送れるでしょうか?

著者は本書でこのように述べています。

少年法の改正は、誰のために作られたのだろうか。被害者のためなのか、加害者に必要とされたのか。

実名報道によって、加害者の家族が苦しい生活を送らなければならない状況に、疑問が残る。

仕事をなくし、社会から疎外されて生きることは厳しい。

犯罪者だから?

犯罪をした者の家族だから?

だから、仕方ない。そう思う人が社会には多くいるのだろうか。

第4章 追い詰められて闇バイトで再び犯罪へ p162

そんな著者が提示する問いに我々大人が考えなければならないと思います。

ただ起こった犯罪や罪を犯した少年たちに対して俯瞰して、叩くことは簡単です。

しかし彼らを叩くことは、同時に受け入れなければいけないと思います。

それが社会にいち早く出た先輩としての責任、法治国家である日本の義務だと私は思います。

本書を読んだことで、多くの人が考えるように自分の大切な人が被害に有ったらと考えると少年・少女の犯罪だろうが許すことができないという立場には変わりはありません。

ただ、今の「やり直しがきかない社会」では少年・少女が再犯を犯すことなく社会に復帰できるとは到底思えません。

と考えさせてくれる作品でした。

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